芸大和声の森

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芸大和声とは、日本のクラシックの音大で学ぶ
和声学のことです。
作曲コースや楽理コース以外の学生は音大に入ってから
100%学びます。
独特のしきたりや方法論で良くも悪くも日本の和声学を引っ張ってきた
理論となります。
ベースは古典派時代の理論です。当時のベートーヴェン等はこれらを全て
自分の耳だけで判断していたというからすごいことです。
芸大和声はなるべく減となる音程を嫌いました。要するに濁りや淀みです。
それを徹底的に排除した集大成とも言えます。
ジャズ理論との大きな違いはここで、減音程となるディソナンスが
ジャズ和声のリッチサウンドを作り出しています。
まるで真逆の和声とも言えるかもしれません。
和声はこれだけではありません。禁則が山のように出てきますが、
一つの方法論とだけ認識してもらえばいいと思います。
この方法論が守れてないからあの人の音楽は禁則ばかりだ!とはなりません。
またジャズの理論とは考え方がまるで違うため別物として考えるようにしてください。
最近では新しいテキストが出だしましたが、過去は赤黄青の3巻にわかれていました。
大抵は器楽科の学生は2巻までで終わる学校が多いようです。
作曲学科に入学するためにはこの三巻は全て高校生のうちに
終わらせてさらにその他も対位法とかフーガとかシャランとか大量にやることがあり、
とても数年で終わらせられる内容ではありません。
音大生にとっては芸大和声やここらへんは導入と思っていただいて結構です。
音大生でも苦手な人はたくさんいます。
指揮科の人も和声を理解しておくのは必須です。
このページには書籍には出てこないTipsも多く含まれていますので、
学ぶ人にも有益な情報が含まれています。


一巻の内容

●日本の芸大和声は混声四部合唱をイメージしているため、
ソプラノ、アルト、テノール、バスの音域で考えていく。
バスから考えると、音域はヘニハイトニハイの中で考えるように覚えさせられる。

●バスとテノール以外はオクターブ以上音程を離れて配置してはいけない。
バスとテノールは完全12度まで、オクターブ+完全5度までOKで、
これは倍音列の響きを考慮しているものと考えられる。

●上3声(じょうさんせい)=SAT、下3声(かさんせい)=BTA

●クローズは密集。オープンは開離という名で芸大和声は呼ぶ。

●オープンの配置が芸大和声はジャズ和声からすれば独特で、
通常オープンはオクターブ以上の配置であるが、
芸大和声は和音を一個飛ばしで配置する。

●Ⅱ-Ⅴの連結ではⅤの第5音は保留せず下行させる。保留するといい響きがしないし、
短調にした時に増2度の音程ができてしまうため。
だがジャズでは無論使いまくっている。

●第1転回位置では第3音がバスに置かれる。
一般に、Ⅰ、Ⅳの第1転回位置では上3声には第3音を含めないが良い。
また導音重複は禁ぜられる。
第一転回形は「_1」とここでは記す。(本ページ内のみ)

●またこの時上3声はどこかの声部がオクターブ配分になる。

●3和音に付加された構成音を付加(構成)音という

●付加(構成)音を含む和声(形体)を付加和音(形体)という

●Ⅴ-Ⅵの連結では両和音に共通音がないため、上3声を全部バスの動きに反行させるべきであるが、
Ⅴの第3音(Ⅶ)は導音であり必ず主音(Ⅰ)に上行する性質を持っているため導音以外は反行させる
必要がある。
また、この場合、後続和音Ⅵは上3声中に2個の第3音(Ⅰ)を含み、標準外配置を行う。これに後続する
3和音は再び標準配置に戻さなければならない。
標準外配置のⅥの前後の和音の配分は一致してもしていなくても良い。
またⅥがオクターブ配分の場合、それからⅡに連結する場合には、バス・アルト間に生ずる連続5度(反行)は例外的に許される。

●Ⅰ-Ⅳ-Ⅴと和音が進行して行くかたまりを「カデンツ」という

●和音が次の和音に進むことを「和音進行」という
クラシックでの和音進行は次の通り
ⅠはⅡ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵに進行できる。
ⅥはⅡ、Ⅳ、Ⅴに進行できる。
ⅤはⅠ、Ⅳに進行できる。
Ⅳは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅴに進行できる。
ⅡはⅤに進行できる。

●共通音のない和音の連結では、バスの動きに対して上3声を反行させて、近いところに置く
共通音のない和音の連結は、
Ⅳ-Ⅴ、Ⅵ-Ⅴ、Ⅰ-Ⅱ
がある。

●共通音が2つある和音の連結では、禁則が起こりにくい連結である。
①共通音を2つ結ぶ。
②共通音を全く結ばない。
のどちらも可能である。②はたくさんやってはいけないことになっている。
②を使うことでソプラノの動きを面白くすることができる。
Ⅰ-Ⅵ、Ⅳ-Ⅱ、Ⅵ-Ⅳ
がある。

●長調、短調の表記
クラシックでは、C dur=C Major、c moll=C minorとドイツ語で表記
C dur=C:、c moll=c:
と略して表記する。
長調は大文字、短調は小文字で表記することにも注意。

●3和音の第1転回形について
第1転回位置では、第3音がバスに置かれる。
一般的に、ⅠとⅣの第1転回形では上3声中には第3音を含めない方が良いとされる。
また、導音重複は禁ぜられるため、
Ⅴの第1転回形の上3声中に第3音の導音を含めることは不可能となる。
なぜ上3声中に第3音を含めることができないかにおいては、 
例えば、C:Ⅰの第1転回形で理由づけられる。
バスに置かれたE音の倍音と上に置かれたE音に対して、不協和音を強調してしまうことが、
大きな理由とされている。

●第1転回位置のⅠ、Ⅳ、Ⅴの和音は共通音が2つあれば1つを保留する。

●第1転回位置のカデンツで共通音のない場合は後続和音の上3声は先行和音の
上3声に最も近い標準配置を選択する。

●並逹5度、並逹8度はソプラノが跳躍進行する場合は不良となる。

●一転から一転の和音連結時は両方ともオクターブ配分にすると連続8度が生ずるため、
一方(または両方)をオクターブ以外の配分にする。これを「配分移行」という。
但し、2つのオクターブ音程が、同時保留の場合にだけ良好となる。
(基本位置では連続8度で不良)

●Ⅱの第1転回形では上3声に第3音を含む密集配分の根音上位(ミッコン)が最適とされ、
かつ後続和音Ⅴに進む際に上3声を全部下行させる(Ⅴの第1転回形第1転回形に進むことは稀である)
第5音高位は不良である。短調だと、減3和音をできる限りよくしようという試みがこの方法で
見られることになる。
また連続が出ないように下行させるのが一般的であり、よく出題される。

●Ⅱ_1からⅤ_1の連結においては、Ⅱ_1の上3声はかなずしも下行しない。

●Ⅱ_1は密集配置の3音高位(ミッサン)、または開離配置の根音高位(カイコン)を
用いることも多い。後続和音Ⅴに進むさいに上3声を全部下行させる。
またオクターブ配分でも良い。この場合は共通音は保留する。

●先行和音(以下BHとする)からⅡ_1の連結に際し、Ⅱ_1の最適の配置のため、
上3声またはその一部が跳躍する。配分転換後は転換した配分関係を維持する。
よって、最適配置のⅡ_1を導くための配分転換は常に良好となる。

●Ⅵ_1は特殊な用法をもつため、3巻までオアズケ。
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●第2転回位置は_2と本ページ内では表す。
通常は音度記号の右上に小さく2と記す。





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●7の和音について
7は通常小さく表記する。キーをCで考えた場合、
Ⅰ7=CM7 Ⅱ7=Dm7 Ⅲ7=Em7 Ⅳ7=FM7 Ⅴ7=G7
Ⅵ7=Am7 Ⅶ7=Bm7b5
を意味することから、クラシカルな理論はダイアトニックコードにより
機能性を考えていることがわかる。
ジャズの表記では
Ⅰ7=C7 Ⅱ7=D7 Ⅲ7=E7 Ⅳ7=F7 Ⅴ7=G7
Ⅵ7=A7 Ⅶ7=B7
と全く機能が異なるため、使用には十分注意されたい。

●Ⅴ7の和音は4種の低音位をもつ
第7音がバスに置かれた場合、第3転回位置=転回指数3(ここでは「_3」と略記する)という。
各低音位の上3声には、バス以外の3種の構成音1つずつを用いる。
但し、基本位置では第5音を省き根音=rootを加える事が多い

●導音は主音に2度上行し上行限定進行音という
限定的に2度下行するものは下行限定進行音という

Ⅴ7の和音からⅠの和音への連結時は上3声のroot音の共通音は常に保留する。


●Ⅴ7→Ⅵの連結
基本位置のⅤ7に限りⅠのかわりに基本位置のⅥへ進行可能である。
Ⅴ7→Ⅵの連結において、Ⅴ7の上部構成音は第5音を含むものを用いる。

●Ⅴ7の根音省略形体
Ⅴ7の和音は根音を省いて用い、
これをⅤ7の和音の根音省略形体(/rと略記する)という。(本ページ内のみの表記)
実際には音度記号Ⅴに斜線を引いて記すが、ここではⅤ7/rと記す。
根音を省略するのは根音がない方がスムーズに進行できるからである。
Ⅴ7/rの和音は3種の低音位を持つ。
Ⅴ7/rの第2転回位置はⅤ7/r_2とここでは記す。第3転回位置Ⅴ7/r_3とここでは記す。
またここでは上部構成音a)はa型と記す。上部構成音b)はb型と記すこととする。

Ⅴ7/r_2のa型は3、5、7度の全部を用いる
b型は、5度を抜いて7度の音を重複し、3度の音を1つの形となる。トライトーンだけの形となる。
a型は仕方なく5音をバスに重ねている形である。
Ⅴ7/r_2の定型はⅤ7_2と同様
Ⅴ7/r_2→Ⅰ、Ⅴ7/r_2→Ⅰ_1の進行となり、このバスの動きしか使えない。
これらは非和声音のところで使い勝手が良い。

Ex. C:のⅤ_1とa:のⅡ_1がほぼ同じ形になる

Ⅴ7/r_2→ Ⅰ_1 or Ⅰ_2への進行は配分転換を起こす。

a型の場合には、Ⅴ7/r_2の上3声の最適な配置が存在する。
第3音高位の密集配分=ミッサン
第5音高位の密集配分=ミツゴ
第7音高位の開離配分=カイナナ

定型における上3声の連結は限定音の進行はそのまま行い、第5音(C:レの音)は5度下行または
4度上行(跳躍)し、Ⅰの第5音(C:ソの音)にする。
これは強進行を意味し、限定進行に近い扱いをしている。
完全などの禁則を作らないための配慮である。
この配置では配分転換を通常招く。
通称「押し上げタイプ」という作曲家もいる

a型のⅤ7/r_2→Ⅰ_1のⅠ_1の上2声には第3音が必然的に含まれるが、Ⅴ7/r_2→Ⅰ_1の場合と同様
許される。

上部構成音b)タイプではⅤ7/r_2の上3声の最適配置は第7音高位の
オクターヴ配分
とする。
するとソプラノとテノールが第7音となる。
この時にソプラノを下行限定進行音として扱い、限定する。
テノールは上行する。同時に下行にすると連続が起きるため、
このような配置となる。
第3音は導音のため次の和音に短二度上行する。

●Ⅴ9の和音
9は7と同様小さくⅤの下に記す。
日本では「属9の和音」と呼ばれるものである。
●9の和音は芸大和声ではⅤ音の上にだけ形成される。
これは9を非和声音として捉えジャズ理論のセカンダリードミナントコード的な
考え方をここではしないという考え方のようであるが、詳細をここで論じる必要性がないため
ここでは割愛する。

●第5音は4声体では省略される。

●第9音はC:であればラのⅥ度の音であるが、ラはⅠの第5音のソに解決する。
要するに下行限定進行音となる。
ここでは基本形だけを学習し、転回形は後半に略述されている。
Ⅴ9の和音は、4声体では常に第5音(G9ではレの音)を省略する。
●Ⅴ9の第9音はルートより9度以上上方に置かなければならない。
(ジャズでもG9ではなく2度であればG2と表すし、考えは同じである。但し、コード上の話でスケールにおいては関係がない)
●長調のⅤ9の第9音は第3音より7度以上上方に置かなければならない。
ただし、先行和音から第9音が予備されていれば、第3音より下においても
良いことになっている。
しかしながら、短調においては短三度の関係になるため、どちらが下に来ても
良い

最適の配置は長調短調とも第9音高位のオープン、クローズである。
(オクターブ配分にはならないがそれ以外)


Ⅴ9からⅠの連結において、ラの音があるからⅤ9からⅥにはいかないことになっている。
(芸大和声のみの話)





二巻の内容


Ⅱの3和音(Cをトニックとするとレファラ)に第7音(Ⅰ)を付加すると、Ⅱ7の和音ができる。
クラシックでは7は小さく記す。

Ⅱ7の和音は4種の低音位がある。要するに転回形がある。

〔基〕に限り、第5音を省き根音を加えることができる。

Ⅱ7の和音の上3声の配置において、上部構成音は密集(Close)、開離(Open)に配置
(高音位は自由)
〔基〕の上部構成音は特別の事情のない限り第3、5、7音を用いる。

Ⅴ7/r_2→Ⅰ(Ⅰ_1)の連結では第7音(C:ファの音)が内声にある時、
例外的に2度上行(C:ソの音)させることが許される。
この時V7/r_2の第3音が必ず上に必ずあるタイプになる。ない場合はできない。






それ以下
準備中

三巻の内容